翡翠アートに辿り着くまで
プロフィールとして、学生時代から翡翠アート初期の制作活動①を紹介します。翡翠アートの2作目を制作するまでです。
ジュエリーの制作
僕とジュエリーとの接点は、宝飾系の専門学校になります。専門学校ではデザイン、メイキング(彫金)など色々なことを経験しました。
今身に着けている大部分の技術を習得した場所でもあります。
学生時代の振返り
当時を振り返ってみると、仕事と両立して限られた時間の中でとにかく課題をこなしていました。モノ作りは好きでしたので、集中してしまうと時間を忘れて朝まで作業している事ありました。特に苦労したのが『制作基礎』ですね。基礎課題はちょっと...。
何事も最初はそうだと思いますが、全ては『基礎』からです。
失敗を繰り返し課題を完成させるのですが、とにかくOKがでるまで次の課題に進めません。早く完成させても良いものができている訳でもないのですが、「〇〇君は✖✖まで進んだらしいよ」などといった会話が耳に入ってきます。
自分自身が納得できていないものを完成させてもどうかなと思いながらも、課題は進ませたい。そんなジレンマがあり、はやく基礎課題から解放されたいと思っていました。
自由課題に入ってからは、定番の石留めでは物足りず、留め方にこだわったリングと称して作品を制作していましたね。僕はどうも人と同じことをするのが嫌いで...。
まあそんな学生でした。
学生時代の作品
グロッシュラーガーネット+シルバー950
オパール+シルバー950
スタールビー+18Kゴールド
講師から『エロいなぁ』と言われた作品です。
当人は全然意識していなかったので、人から言われてはじめて気づきました。
これってエロいんだ~内なる自分のエロさに気付かされた作品です。
『エロス』をテーマにリングのデザインする課題もあったし、アートとエロは関連深い…
専門学校卒業後の制作活動
卒業後も仕事の空き時間を利用して地味に制作していた感じです。
今の仕事は全然別の業界なので、制作活動と全く接点はありません。
制作活動の中心は翡翠を使ったシルバージュエリーでした。
翡翠+シルバーの組合わせは、学生時代にも課題で制作しましたが、当時はそれ程こだわっていなかったのを覚えています。
今思えばもっと積極的に制作していれば、もっと別のものが生まれていたかもしれません。
翡翠で制作したシルバージュエリー
作品に対するこだわり~石の中に小さな宇宙を感じる
ショップには、鮮やかな緑一色で透明感のある翡翠のジュエリーが並んでいます。
クオリティも高いし綺麗なんですけどね、自分が追及しているものとは何か違う。
僕が作品に選ぶ原石は『魅力的な石』です。
こだわりは 『翡翠の多彩な色をどう作品に表現していくか』 ですが、「これなら良い作品ができそう。」、「同じものをつくるのは不可能。」そう思える石が『魅力的な石』なのです。
石の持っている色の配置・割合など限られた条件下で、最高のものをつくりあげることが制作に必要なことだと思っています。
翡翠リングの制作
きっかけは思いつき
ある日、素材の1つとして身近にある翡翠で何かできないか?と考えたことがありました。使えそうな翡翠ならそれなりにあるし、まあ石の加工技術もない自分にとっては、単なる思いつきだったのですが...
暫くして帰郷した際、父に翡翠でリングつくれないかと相談したところ、簡単にできると答えが返ってきました。
そして数時間後には幅4mm程の翡翠リングができていてそれを見た時は、これなら想像していた物もできるかも、と思った瞬間でした。
翡翠アート 作品#1
学生時代に取り組んでいた『波』をイメージにした作品です。
SIZE: 32.4mm * 11.4mm (#17.5)
MATERIAL: JADE(BLUE)
スケッチ(学生当時のもの)
着彩したレンダリング
着彩したレンダリング・製図
デザインをもとに製作したワックスの原型
例の翡翠リングを使って少しずつカタチにしていき、最終的には強度を考慮し厚みのあるものが出来上がりました。ワックスであればチョット失敗しても最終的には補修などして原型を完成することが出来ますが、石ですから補修などは一切できません。無難に完成させたと言ったところです。
ワックスで原型を制作するように、翡翠原石から思い通りのカタチを、つくることが可能だと知った訳ですが、逆にワックスではできないような特別なモノもカタチにできるではないかと思いました。
オリジナルは鋳造(ロストワックス)と呼ばれる技法で制作しています。
鋳造について簡単に説明すると、
①ワックス(蝋)で原型を作成。
②①の原型をもとに鋳型を作成。
③②の鋳型に金属を流して鋳物が完成。
僕は①~③の工程を一人でやっています。
要するにちゃんと原型をつくり、手順を間違えず鋳造出来れば、原型と同じものが金属で出来上がる訳です。
湯口が残っている鋳造直後の作品
鋳造直後は、真っ黒な状態で出来上がります。
鋳造で制作した作品
MATERIAL: シルバー950
鋳造で制作した作品【別バージョン】
MATERIAL: シルバー950
翡翠アート 作品#2
原石選びから完成まで自身の手で完成させた作品です。
ちょっとボリュームがありますが、これもリングです。
原石を選ぶのも随分悩み、特に「クラック」には気を使いました。
「クラック」が原因で石が割れることがあります。
こうして実際にモノをつくるとなると、色々なこと知り、見えてくることがあります。
モノづくりの大事さを知った作品でもありました。
SIZE: 23.0mm * 11.0mm (#7.5)
MATERIAL: JADE(WHITE)
実はこれ未完成なんです。本当はもっと別のことも試したかったのですが、できていない...もう一歩踏み込んで、テクスチャを表現しようと別の試作品を制作したものの、スキル不足で出来が悪く断念しました。
それが理由でボリュウーム増。
テクスチャを表現しようとした試作品
課題
僕が表現したいテクスチャは、素材にもっと深い彫りこみが必要らしく、それが原因で陰影がハッキリしない。
細く深い線を石に彫り込むのは不可能に近いし、どうしたものか?
今考えていることは、陰影に岩絵具を使い着彩することで陰影を表現するのもアリかなと思っています。黒翡翠の黒の成分は石墨由来の黒色である為、何とか利用することはできないかな?
翡翠は緑でも青でも、基本は白色だし、黒と白は表現できるんじゃないかな。着彩をやるにも未知の領域なんで想像でしかないです。
最後に
#1、#2の作品は、制作当初から『翡翠リング』としか思っていなかったのですが、制作を続けていく過程で今は『翡翠アート』としています。
それから(前述の)課題については、当時は翡翠にこだわって再利用を考えていましたが、現時点では不可能かな…。石墨の成分が少ないし、石墨だけ取り出すのもチョット無理なことが判明、翡翠を再利用することはなくなりました。やるならちゃんとした岩絵具を使用するという方針でいます。